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2015年11月8日 日本台湾学会会員各位 台湾史研究会各位 日本台湾学会関西部会係 台湾史研究会事務局 日本台湾学会第13回関西部会研究大会 師走の候、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 本年度も下記の要領で第13回日本台湾学会関西部会研究大会を開催いたします。皆様にはふるってご出席くださいますようお願い申し上げます。 本年度も日本台湾学会と台湾史研究会との共催で行います。 記 日時:12月19日(土) 12時45分(受付開始)~ 場所:名古屋市立大学(滝子キャンパス) 1号館 2階203号室 各報告 報告25分 コメントと質疑応答 15分 <プログラム> 自由論題の部 13:00~15:00 司会 やまだあつし(名古屋市立大学) ① 戦後日本の台湾独立運動における国際政治的要因―連合国軍当局による廖文毅の拘置をめぐって 郭鋭(神戸大学・院) 評論:浅野豊美(早稲田大学) 第二次世界大戦後、初の台湾独立運動が1948年に香港で廖文毅を指導者とする「台湾再解放聯盟」の成立によって発足した。その後、廖文毅は日本に移り、1950年に東京で「台湾民主独立党」を樹立した。彼は台湾の地位と前途をめぐって当時台湾を統治する国民政府(即ち中華民国政府、国民党政権)と全く異なる政治的主張を提示し、台湾独立運動を一層高揚させていた。これに対して、中国の正統政府としての立場を主張して「一つの中国」の維持を狙っていた国民政府は様々な対策を講じて抑えようとしていた。 「台湾民主独立党」成立前、廖文毅は1950年2月28日に京都で二・二八事件3周年記念会を行い、台湾独立の主張を宣揚した。これに対して、国民政府は強い不満を表明し、マッカーサーに抗議をして交渉を申し入れた。それによって、3月16日に廖文毅が連合国軍当局に逮捕され、懲役6ヵ月の実刑判決を受けた。国民政府による「反台独闘争」によってのみ、廖文毅は逮捕されたわけでなく、この逮捕は当時の複雑な国際政治情勢も関係していた。この事件に、日本占領中、冷戦開始、国共内戦終了、朝鮮戦争勃発直前などの要因が錯綜していると考えられる。 本報告は廖文毅の逮捕をめぐって、当時国民政府と連合国軍当局との交渉の実態を明らかにし、この事件に反映される様々な国際的要因を解明し、戦後日本における台湾独立運動の初の挫折を考察するものである。 ② 日本統治期台湾の農家経営―養豚によるエコシステムの分析 中嶋航一(帝塚山大学) 評論:堀内義隆(三重大学) 台湾総督府は、台湾農家の養豚について「農民の食糧として重要なる位置を占むるのみならず、農家経済に密接なる関係を有し、其の盛衰は直ちに農家金融に影響を及ぼし、農村経済上重要なる産業なりとす」と認識していた。しかし従来の台湾養豚は、自給自足の「婦女子の行う副業」であった。そのため総督府は養豚業の近代化を図るため、1897年にバークシャー種を移入して在来豚の品種改良の研究を開始し、その成果を基に1908年に優良種豚の普及を図る事業を設置した。更に1925年に予算10万円を追加して、5カ年計画でバークシャー雑種の全島普及の奨励策を行った。総督府はこの品種改良事業に加えて、糞尿の収集(豚肥料)・活用、豚舎の改良、衛生管理や飼養管理の教育指導などを行っている。台湾の多様な在来種を整理してバークシャー雑種に限定することで、豚品種の標準化を図り豚肉の商品としての均一化を図る手法は、台湾在来の長粒米(在来米)の品種改良と日本種の水稲(蓬莱米)を開発し、農会を通して蓬莱米を普及させたやり方と同じである。 従来の研究では、総督府の「産米増殖政策」とか、甘蔗と米作の「糖米相克」の分析が中心で、台湾農家の養豚と、米作や甘蔗作・甘藷作との有機的なエコシステムに関する視点がない。また「搾取と抑圧」のイデオロギーでは、バークシャー雑種の品種交代が急速に実現したのは、総督府の強権と暴力によるものだと解釈されよう。しかし蓬莱米や砂糖と違い、豚は台湾人の主要な家畜食料であり、また内地の豚肉市場は小さく対日移出の対象とはならなかった。つまり、内地経済と利害関係を強く持つ糖業や蓬莱米と異なり、台湾農家が経営リスクを取って豚の品種を在来種からバークシャー雑種に変更したのは、その方が農家の経営にとって経済合理的であったからであると考える以外にない。本報告は、台湾農家の経営判断は経済合理性によって決定されると前提し、その経営構造を大きく変えた養豚について分析を進める。 ③ 災害復興の国際比較からみる移民社会台湾の特質と民主化の成果 陳來幸(兵庫県立大学) 評論:今井淳雄(天理大学) 災害は往々にして平時の社会的弱者の問題を浮き彫りにする。そして、復興の推進においては、政治の在り方がその進展にとっての制約要因ともなり、促進要因ともなりうる。 本報告ではまず自然災害頻発地としての台湾の災害史を振り返り、防災への対策がどのように制度化されてきたのかを簡単に跡づけ、ついで、1999年台湾中部で発生した九二一(集集)地震と、2009年南部で起こったモラコット台風の集中豪雨による八八水害という二つの激甚災害をとりあげ、台湾固有の民主化プロセスとそれと連動する社会運動や市民社会形成の経緯との関連について考察を進める。次に、災害復興の過程から見えてくる移民社会としての台湾の特質を見定め、近年急きょ浮上してきた台湾の少子化と外国人花嫁の問題について論じ、国際比較の視点から台湾と日本の社会が抱える共通の課題に対する対応を考察する。そして、最後に台湾の仏教系国際救援組織「慈済」の国境を越えたトランナショナルな行動力と求心力に注目し、尼僧を中心に発展してきた「慈済基金会」の行動パターンを通して認められる、華僑華人ネットワークの新しい特徴的傾向について論じたい。 シンポジウム 東山彰良『流』~直木賞受賞作を読む 15:20~17:20 今年の直木賞は『流』が受賞しました。単行本として刊行されたのは2015年5月で、2か月後の7月16日夜には受賞が決定しました。選考委員9名(浅田次郎・伊集院静・北方謙三・桐野夏生・高村薫・林真理子・東野圭吾・宮城谷昌光・宮部みゆき)の全員一致でした。「二人の委員が、自分が選考に関わって以来の最高作だ、と絶賛した」と東野圭吾氏が選評で明らかにしており、「近年では突出した青春小説として仕上がっていた」(北方謙三委員)ようです。各委員の選評には、それぞれ独自の視点から、高い評価と今後への期待が寄せられています。 もちろん台湾に関わりがある人々にとっても『流』は無視できない小説です。特に昔の台北の繁華街を知っている人にとっては、「懐かしい~というより当時の台湾の生活風景・空気感が、痛いほどに顔を打つ~そうした感覚に、驚きを隠せません」(二宮会員)というところでしょうか。今回のシンポジウムでは、さっそく各視点からの『流』を大いに議論したいと思います。 パネリスト:二宮一郎(大阪府立桃谷高校) パネリスト:和泉司(豊橋技術科学大学) パネリスト:星野幸代(名古屋大学) 司会:澤井律之(京都光華女子大学) 懇親会 18:00~ (会費3000~5000円) 参加される方は事前に、やまだあつし(名古屋市立大学)までご連絡ください。 アドレス atsushi [a] hum.nagoya-cu.ac.jp <会場へのアクセス> 名古屋市立大学・滝子キャンパスへの経路 -地下鉄の場合- 名古屋市営地下鉄桜通線で、名古屋から桜山まで16分。 名古屋市営地下鉄桜山駅5番出口から、滝子キャンパスまで徒歩12分。 -市バスの場合- 金山駅前のバス停から、金山11・12・16系統または、金山14系統(博物館経由)で15分、滝子バス停下車、徒歩5分。 名古屋市立大学・滝子キャンパス1号館の場所 東門(下図の右下)から構内に入り、左手最初の建物が1号館。 <日本台湾学会関西部会係> 京都光華女子大学キャリア形成学部 澤井律之 〒615-0882京都市右京区葛野38番 tel 075(325)5343 mail: rb062 [a] mail.koka.ac.jp
by taiwan_studies
| 2015-11-11 20:45
| 定例研究会
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